木村昇吾に学ぶFAと選手契約制度

別に木村のFA宣言の妥当性とか,そういう話を書く気は無く,
今回の彼の動向を見ていると,
プロ野球選手の契約周りに関する知識を得る上で良い題材になると思ったので
今回,ここにまとめてみた.

以下,基本的にQA形式で.


■そもそも「FA(フリーエージェント)」って何?

原義的には「どの球団とも自由に契約を結べる人」のこと.
クビになるか,後述のFA宣言を行うことで,その立場になれる.
木村の場合は後者のルートでFAとなった形.


■FA宣言すると,選手にはどんなメリットがあるの?

自分の意思で,所属球団を探すことができる.
プロ野球選手は,入団にせよトレードにせよ,
所属先を自分で決める権利が与えられておらず,一部で問題視もされている.

FA宣言をすることで,初めて真の意味での「個人事業主」として
自分の活躍の場を選べるようになる.


■FA宣言って誰でもできるの?

おおざっぱに言えば,1軍で9年間活躍すれば,宣言の権利を与えられる.
また,「9年は長すぎる!」という選手側の要望により,
7年間活躍した選手に対しても,「国内FA」と呼ばれる,
各種制限付きのFAになる権利が与えられる.
正規のFAはそれと区別するために「海外FA」と呼ばれたりもする.

今回,木村が宣言したのは,正規版の「海外FA」の方.
上述のとおり,FAとはあくまで自由契約者の意なので,
別に海外志向の選手のみが宣言するものでない点にご留意を.
※この海外FAという,誤解与えまくる名称考えた人,センス無いと思う.


■いつでも宣言できるの?

日本シリーズ終了後から7営業日の間となる.
木村は締め切りギリギリの11/10に宣言したので,相当悩んだ模様.


■なぜ木村は宣言後も11月末までカープの施設で練習を続けられたの?

プロ野球選手の契約は2月~11月の10か月間であるため.
宣言の有無にかかわらず,木村は11月末まではカープの選手であり,
球団の資材を自由に活用する権利が与えられていた.

なお,翌年2月から新たに契約を結ぶ予定の選手については,
「契約保留選手名簿」として,11月末にNPBから公示される.

あくまで「見込み」のリストなので,
スティングで海外移籍濃厚であった前田健太や,
名簿公開時点では契約に至っていなかったDeNA筒香なども,一旦はリストに載る.

ちなみにカープの今年分は以下.
2016年度 契約保留選手名簿(広島東洋カープ) | 2015年度公示 | NPB.jp 日本野球機構

木村の場合はFA(正確には海外FA)なので,この一覧には載っていない.


■木村は何故,どこからも獲得されなかったの?

球団の人間じゃないとわからないので深くは語らないけど,
一部で「木村はランクBなのでは」という説が噂されている.

ランクとは,「球団内における日本人選手の年俸のランク」であり,
1位~3位をA,4位~10位をB,11位以下をCと分類している.

FA宣言をした選手のランクがAかBの場合,
その選手を獲得した球団は,獲得元(木村の場合カープ)に対して
金銭もしくは選手を代償として支払わないといけない.

木村の場合,実は10位のランクBであり,
それが原因で他球団が尻込みしているのでは……という説となる.
(4,100万円という年俸は,確かにギリギリランクBでもおかしくない)
真相は不明.


■木村が,万が一,西武との契約合意に至らなかったらどうなるの?

特にシステム的な救済はなく,
引き続き木村は自分自身で移籍先を探すことになる.
それを含めて「自由」契約.


■日ハム藤井のときほど騒ぎになってないのは何故?

日ハム藤井の場合は国内FA宣言だったため.
国内FAには制限があると冒頭で述べたが,その1つとして
NPBに所属する12球団にしか移籍不可」というものがある.

藤井の場合は宣言したものの,どの球団も手を挙げなかった.

一応,制度上,このような状況になっても選手が路頭に迷わぬよう,
上述の「契約保留選手名簿」に載せ続ける義務が球団側(日ハム)にある.
保留選手名簿に載せている間,その球団には
・保留している間も手当(給料)を出さないといけない
・その選手の分の支配下選手登録枠を優先的に空けないといけない
などの義務が発生するため,再契約に対してある程度の強制力が発揮される.

しかし,元々日ハムはその年限りで藤井を解雇するつもりだったため,
再契約を固辞し,結果として藤井は行き場所がなくなってしまった.

話を戻すと,木村には独立リーグや海外という選択肢が与えられているが,
藤井に関しては「12球団が手を上げなければアウト」という
国内FAの問題点をダイレクトで突く状況になったため,問題化した.

ちなみに,藤井の問題は,ご存知の通り,
巨人が格安で拾う形で一応の沈静化を果たした.


以上,だいたいこんな感じ.